悠の詩〈第2章〉
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文化祭まであと2週間を切ったある日。
弁当の時間が終わって用を足しに行こうとして教室を出ると、2階に向かう階段の脇で柏木と高浪が話をしていた。
クラスで1、2の高さを争うこのふたりが揃うと目を引く。
「──先生からも話が行ったと思うけど」
「──つもりでやってるんじゃないから」
「──もう少し、考えてもらえたら」
「──だから、個人的な事で仕方なしにだから」
話を…というより、言い争っている? 高浪が何か必死になっていて、柏木はそれが迷惑そう。
穏やかじゃねぇなと思いながら、膀胱が限界だったので俺はその場を離れた。からかう暇はなかった。
スッキリしてトイレから出てくると、まだ柏木と高浪が階段の所で話し込んでいた。
と思ったら、柏木は階段を足早に上がっていって、高浪は落胆した様子で教室に戻っていった。
穏やかじゃねぇなぁ、また思った。
だいたいアイツ、何でこの時間いっつもいねぇの。
また唐突に、沸々と出てくる疑問と好奇心。
いつもならそんな事思わないで、校庭へ出てクラスのヤツらとバレーボールのラリーをするのに、上へ行っちゃった柏木の姿を捉えてしまったから、気になってしまってしょうがない。
「あれ柳内ー? 昼休みのバレーボール借りに行ってくれたんじゃなかったのかよ?」
同じクラスの松谷が手ぶらの俺を見て不思議そうに言った。
「悪い、俺今日パスな!」
はあ? 何で?? という松谷の質問に答えずに、一段飛ばしで階段を駆け上がった。
…