悠の詩〈第2章〉
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「…後藤くん、やだかな? 申し訳ないな」
実行委員としての仕事を終えた由野が、樹深の方を見ながら戻ってきた。俺達今隣同士。
「平気平気。あいつ意外にああいうの楽しんでやるから。心配は高確率で無用だぞ?」
俺がおちゃらけたフォローをすると、由野は「やだ春海くんってば」派手に吹き出した。
それと同時に5時間目開始のチャイムが鳴り、コタ先生が前から、柏木が後ろから教室に入ってきた。
樹深と柏木が今隣同士で、
「あれ後藤くん、そんな必死にナニやってんの」
「俺この後皆に熱弁振るうから、そのカンペ」
「熱弁? うまくいくよう祈っとこうか?(笑)」
「ほんと? じゃあよろしく(笑)」
それなりに離れているのに、更に周りがガヤガヤうるさいのに、ふたりの声はよく通って聞こえた。
樹深のアイデアは予想以上に皆にウケが良かった。
なりきり、というのは要はマネキンになるって事。例えばロダンの【考える人】の彫刻の、ポーズやら衣装やらをその通りに俺達が披露するんだと。
どの美術品を再現するのか、ブースの装飾をどうするのか、必要な材料は何かとか、当日の役割分担はアレとコレとソレと…とか、どれもスムーズにまとまって、他のクラスより早い準備開始となった。
コタ先生は何も口を出さないで、
「思うようにやりな、危ない事だけは勘弁だぞ?」
と、結束のいい俺達を見て満足げに笑っていた。
…