悠の詩〈第2章〉
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そんな俺を笑いながらも、由野と丸山と樹深はありがとうと律儀に言って、
「じゃあ…春海くんで!」
「あ、僕も春海くんで」
「俺はもちろん春海ちゃんで」
ナニこのショートコントみたいなの、と思いながら、改めての呼び名を聞いた。
「ホラ悠サン! 悠サンは何て呼ぶの」
「へっ、私…も??」
ひとりで肩を揺らして笑いを噛み殺していた柏木にもとばっちりが来た。肘から軽くずり落ちたのが可笑しかった。
「もちろん。王様の言う事は、だよね?」
由野には敵わない、俺と同じように声にならない声を柏木なりにあげて、観念した顔で俺を見た。
「じゃあ…
…ハルミ」
キミには呼び捨てじゃないと気持ち悪い、と言い捨てて、柏木はまた窓の向こうを眺めだした。
「…へへ。おう! どうとでも呼べ」
正直柏木の名前呼び捨てにかなりびっくり仰天だったが、コイツらしいや、簡単にストンと自分の中に落ちた。
これが、ナニかの始まりであったはず。
だけど、この時の俺は全く気付いていない。
※よければこちらもどうぞ
→【悠の詩】中間雑談・6
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