悠の詩〈第2章〉
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「やっとかー。で、何だ?? あんまり変な事はやめてくれよ」
「えー? さっきは何でも来いな勢いだったのに?(笑)」
他の3人も由野に注目する。皆の視線を浴びて、由野は少し照れくさそうにこう言った。
「あのね。
私。
…名前で呼びたい、柳内くんのこと」
「へ、え? そんなんでいいの?」
別にいいけど、と言う前に樹深が前のめりに挙手をして、
「ハイハイハイ、俺も呼びたいです、学校でも気兼ねなく」
ちょっと必死で言うから吹き出しそうになった。
「いいなあ、僕も呼びたいな」なんて丸山も言う。
あのなあ、由野のお願いだろ? 由野だけ呼ぶようにするのが筋なんじゃないの。
しかし俺の独白は一切通じないで、
「うんうん、みんなも呼ぼう。私だけじゃ恥ずかしいし」
「ほんと?」
「やったぁ」
なんて、どんどん話が膨らんでいく。「あのなあ!」と出かかったところで、窓際に右肘ついて外をぼんやり眺めていた柏木が、俺を見てニヒルに言った。
「王様の言う事なんだから、聞くのが筋なんでないの(笑)」
これには参った。俺は声にならない声をあげて顔を歪めたけど、諦めて受け入れる事にした。
「~~~っ。好きに呼べ、ちくしょー」
…