悠の詩〈第2章〉
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「へー…知らない間に進展してんのね、お前ら」
「ナニそのやらしい言い方(呆)」
「べっつにー。
で、オマエは?」
「は」
「なんて言ってるの、アイツを」
なんとなく、由野が呼ぶだけでは済まないような気がしてそう聞いた。
柏木は軽く目を見開いて、また由野の背中を見つめた。そしてずいぶん間を空けた後、
「…琴サン」
ボソッと言った。背の高い柏木が究極に縮こまる。
「おほーっ」
「だから、ナニその反応(呆)」
俺のヘンな反応に柏木はすっかり呆れ返って、駅舎をとっくに出たみんなの所へ、俺を置いて足早に駆けていった。
駅舎を出た所で「悠サン早く早く」と由野が手招きして、「琴サン、ボーリング場どっち」照れくさそうながらも柏木が言う、堅苦しさはなさそうだった。
その様子を遠巻きに見て、俺はぼんやり思った。着々と柏木を取り込んでる、やるじゃん由野。
○田駅から国道沿いに10分ほど歩けば目的のボーリング場、すぐに目印のばかでかいボーリングのピンが見えてきた。
「うわーっ久しぶりだなここ来るの」
「俺多分、はる…柳内くんと昔行ったのが最後」
「えっ? それひょっとして、卒園の後で家族ぐるみで行った時??」
「そうそう(笑)」
「まじか! 俺はそこまでじゃねぇわ」
俺と樹深の会話に他の3人がくすくす笑う、正面玄関の自動ドアを開けると、ボールがピンを崩す派手な音が俺達を迎えた。
「受付してきちゃうね」と颯爽とカウンターに向かう丸山の背中を見送って、キョロキョロと辺りを見回してみる。
夏休みの平日、それなりに人は沢山いて、でもいくつかのレーンは空いていて、すぐに俺達を通してくれそうだった。
…