悠の詩〈第2章〉
38/80ページ
「そういえば、なぁ、オマエ午前用事あるって由野が言ってたけど」
「あぁ…正確には午前中に起きられる自信がなかったんだよ。昨日□□市まで行ってて、日付変わってから家に着いたからさ…」
□□市!? 県ふたつ挟んで向こうじゃんか。一体何用で、とは聞かなかった、どうせ演劇云々だろうから。
「そんな大移動の後で今日大丈夫なのかよ? 休んでたらいいのに」
そもそもオマエ、こういう集まりに興味ないんじゃないの、とは口には出さなかったけど。
「またキミは、おかんか(笑) 心配はありがたいけどさ。
大丈夫だってば。これでも楽しみにしてるんだよ、見えないだろうけど」
言葉の裏を見透かされてギクッとなった俺を、「まーた、顔に出る」と柏木は笑った。
「まぁとにかくね、案の定寝坊しまして。焦って走ってきたというわけ…
で、改札に誰もいないし、キミがここにいるのが見えたし。急いで来る事もなかった(笑)」
「あーやっぱりな、集合時間ざっくばらん過ぎなんだよ。何でソコ誰もつっこまなかったんだよ(笑)」
「ごもっとも。あの時は皆、そんな感じでいいって思っちゃったんだよねぇ(笑)」
「どーする? このまま、2時くらいまで誰も来なかったら?(笑)」
「まさか。でも、ありえなくはないからこわいな(笑)(笑)」
柏木とこんなに会話が続くのも珍しく、しかも笑い合いながら、俺達こんなだっだっけ。
いつもなら俺の言う事なす事にひとことでバッサリぶったぎる、それがコイツじゃなかったか?
…