悠の詩〈第2章〉

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 そんな時の俺はすぐに顔に出ちゃうらしく、

「ナニ、ヘンなカオしちゃって(笑)」

 トレーを持って戻ってきた柏木は、俺を見て肩を揺らした。

 どうやら嫌なヤツには見えなかったらしい。柏木の器の大きさのおかげなのか、俺の元々の性格の賜物か。

 とにかく、ホッとした。

 柏木が買ってきた昼ごはんはナゲットひと箱とドリンク、それだけだった。

「えー? まじかオマエ。そんなんで昼中もつのかよ」

「うるさいなぁ…今、あんまりお腹空かないんだよ。夏休み中ずっと劇団の中だったからなぁ…皆につられてこっちも気ぃ張っちゃうんだ。
 学校が始まれば元のリズムに戻れるとは思うけど、今練習してるのが封切りするまでは多分落ち着かないだろうし…うーん」

 ひとつのナゲットをチビチビかじりながら、ひとりごとみたいに言う。

 難しい話はよく分からん。けど、ちょっと心配になった。

 前に会った(天文部の星座観測の)時より痩せたように見えて、そういえばあの時もコイツ、おにぎりひとつで十分とか言ってたっけ。

「…まったく、キミはほんとすぐに顔に出るね。白い顔して大丈夫かコイツ、とか思ってんでしょ。
 ずっと屋内での生活だったから陽に当たってないだけだよ、体調が悪いとかそんなんじゃないからさ…ふわあぁ~」

 ナゲットの最後のひとつを口に放り込もうとした手を止めて、もうひとつの手で大きなあくびを隠した。(全然隠れてねぇけど)眠そうなのは相変わらずのようで。





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