はるみちゃんとぼく

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 じゃあ新しいお洋服買ってよ、いや、欲しいおもちゃがあるんだった、美味しいものを食べにも行きたい、お姉ちゃんがあれこれ並べ立てるのを、お父さんがフンフンと聞いてる。

 ふとお父さんの視線が僕に向いて、

「樹深も、何でもワガママ言いな?」

 後ろから抱きつく形でまたヒゲジョリをしてきた。

 いたた、と思いながら、一方でずっと気がかりな事を口にしてみた。

「あのさ…イッサは? みんな行っちゃうなら、イッサひとりでお留守番?」

 僕のこの言葉に皆が固まった。

 「イッサって留守番いけるんだったっけ?」「短い買い物の間なら何回もさせてるけど…」なんてざわついて、何でソコ誰も気にしなかったんだろ(呆)

 皆の様子にイッサも不安がよぎったのか、トテトテと僕の膝に乗っかってきて、クンとひとつ鳴いた。

 するとお母さんが大げさに人差し指を掲げて、明るくこう言った。

「大丈夫! ばーちゃんに来てもらうから。ねーイッサ、ばーちゃん好きだもんねー」

 お母さんがしゃがんで両手を広げると、イッサは嬉しそうにそこをめがけて突進して、お母さんに頬擦りをした。

 「お母さん、それたった今思いついたでしょ」とお姉ちゃんが呆れ気味に笑う。

 お母さんがイッサを抱っこしながらおばあちゃんに電話をして了解を得ようとする間、お姉ちゃんはワガママのあれこれをまたお父さんにぶつけて、お父さんはそれを聞きながら「いいよ」「それはちょっとなぁ」と叶えられる事の仕分けをする。

 その合間に「樹深は?」と聞かれるけど、僕は「うーん」と唸るばかりで、なかなかよさげなワガママを思い付けなかった。

「あっそうだ」

 おばあちゃんとの電話を終えて、受話器とイッサを下ろしながら、お母さんがまた声を上げた。

「春海ちゃんに声掛けようか? 春海ちゃんと春海ちゃんパパ、ママが出掛けちゃうからヒマしてないかしら(笑)」





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