はるみちゃんとぼく

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「はるみちゃん!」
「春海くんパパ!」

 僕とお姉ちゃんが同時に叫ぶ。

 我が子たちの勢いにお父さんとお母さんは「おわっ」と小さく叫んだ。

 そして、僕がウキウキしながら、お姉ちゃんが目をハートにしながら、これまた同時に主張するのを、目を丸くしながら聞いた。

「はるみちゃんと野球見たい! はるみちゃんと会うの久しぶりー!」

「春海くんパパが一緒なら私も絶対行く! 春海くんパパカッコいいんだもんー!」

 この言葉達にお父さんはシュンとして、

「あーそうかい…お父さんの事はどーでもいーんだ(泣)」

 と拗ねるのを見て、お母さんは盛大に吹き出した。

「わかったわかった、あんた達は本当に柳内家が好きだね(笑)
 じゃー早速電話して聞いてみよう。もしかしたらもう用事を作っちゃってるかもしれないし」

 置いたばかりの受話器をまた上げて、お母さんは柳内家にコールする。

 結果が気になる僕とお姉ちゃんは、お母さんの背後にソワソワとまとわりついた。

「あ、もしもし、後藤ですが… あっこんばんは。あっはい、いつもお世話になってます… あっはい、お願いします…」

 お母さんがいつもの喋り方じゃなくて声もやたら高い、と思ったら、どうやら春海ちゃんのお父さんが最初に電話に出たらしい。

 「春海くんパパだっ」とお姉ちゃんがお母さんの肘を持ってブラブラさせるので、「こら梓やめて」と静かに一喝された。

「…あっもしもし? 淑子ちゃん? 旦那さんが出てビックリしちゃったわよー。無駄にドキドキしちゃったわよー」

 すっかりいつもの調子のお母さん。受話器の向こうで春海ちゃんのお母さんがあっはっはと笑って【どこにでもいるおじさんだわよ】と言っているのが聞こえた。

 なんだか横道に反れて話が長くなりそうだったので、今度は僕がお母さんの肘を摘まんで、

「おかあさん、早く用件」

 とせっついた。

「あぁそうだったそうだった。
 あのさ淑子ちゃん、今度の土曜、私達が行ってる間に…うんそう、何も予定ないかなぁと思って…」

 お母さんが手短に説明し始めるを安心して聞いていた僕に、突然受話器を渡された。

 どういうこと? とお母さんを見上げると、顎で促しながら言った。

「樹深がお誘いしてごらん。ほら早く、待ってるから」

 僕が受話器を手に取る前に、【お~い、たーつみー?】という声が受話器を伝ってブルッと震えた。





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