悠の詩〈第1章〉

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 先生がそいつの名前を黒板に縦書きに大きく書いて、チョークを置きながら紹介を始めた。

柏木悠かしわぎゆうさんです。
 引っ越してきたばかりで、昨日の入学式には残念ながら間に合わなかったんだ。
 少しばかりの遅れだけど、皆と変わらない新入生だからな。
 この36名で4組の1年間を過ごしていくから、よろしくな!」

「柏木悠、です。よろしくお願いします」

 そんなに声を張り上げてる風でもないのに、柏木の声はよく通った。

 俺達からの歓迎の拍手を受けると、柏木は両手をきっちり体の側面に付けたまま深く頭を下げた。

「柏木の席は、窓際の一番後ろだ。
 柳内! ひとり席はおしまいだぞ。柏木に色々教えてやってくれ」

「はぁい」

 と返事をしたものの、俺、っつーか皆、入学してまだ二日目だってば。

 丸山と由野も同じ事を思ったようで、俺を振り返ってクスクスと笑った。

 柏木が列を縫ってこっちに来る。

 やっぱり背が高いな、何cm? このクラスで1番高い高浪となんら変わらないんじゃないか。

 なんかやたら真顔だし、男子の制服着たらまんま男子じゃん、とそこまで思って、アレ? と引っ掛かった。

 この表情を、つい最近、どこかで見たような?

 と顔をしげしげと見るより先に、この転校生の口からとんでもないのがついて出たんだ。





「……あ。
 ハル、ハル、ハルミ、の人だ」





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