悠の詩〈第2章〉

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 ところで由野、何用で俺に電話? あ、もしかして連絡網か何か? と思ったけど、俺の前は由野じゃない。

『あー、柳内くん、えっとね。
 あの…えーと…
 後藤くんがもう言ったかもなんだけど、今度の木曜日』

「ん? 樹深? 木曜? 何だろ」

『え、聞いてない? もー…本当に言ってないんだ…』

 由野が大きな溜め息をつく。

「どうした? 樹深が何かやらかした? なら、俺言っとくぞ」

 怒りが込められているように感じたので、さりげなくフォローしてみる。でも、あの樹深が何かやらかすって、そんなヤツじゃないよなぁ、違和感もある。

『あっ、ちがうのちがうの。提案者は私だから…私が言わなきゃ。うん。
 あのね柳内くん。柳内くんの怪我、もう大分良くなってるって聞いたから…
 登校日の日、みんなで話してたの。夏休みの最後に、みんなでパーっと遊ばないか? って』

「パーッ、と?」

 何やら楽しそうな響き。俺がいない時にそんな話が出たなんて、ちょっと意外。自分で言うのもなんだけど、俺ムードメーカーだし。

 誰発案? なんて皆無だった、さっき由野が自分で言い出しっぺだっつったじゃん。でもこれも、いつにない事で意外に思う。

『うん。あのね…ボーリングのチケットを貰ったの。5人まで半額になるヤツ。期限が今月いっぱいまでだから、みんながよければ行きたいなぁって。
 登校日の時に話したら、みんな乗り気でね。あとは…柳内くんはどうかなぁって思って』

 ふんふんと見えてない由野に頷く俺。

「まじかー、行く行く。俺さ、その前の日に通院が終わるんだ。やっと体を思いきり動かせるぞ~、楽しみだなぁ」

 俺の返事に由野は『はぁ、よかった』と安堵の声を出した。





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