悠の詩〈第2章〉
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「え、え、え、それで、○○くんどーなるの、また野球出来るようになるの」
「ばっかオマエ、そこは自力で探して読めよなぁ、感動が減っちまうよ」
何故か渋るコタ先生。さっき自分でネタバレしたくせにな。
「まぁ…とはいえ古いマンガだしな。古本屋でも売ってるかどうか…
よし、結末だけな。
○○くんは…万全な状態ではないけど、また野球を始めるよ。
そこまでのエピソードがさぁ、もう泣けて泣けて…
あとは自分で、な!」
ひとしきりそう言って、コタ先生はまたひとりさっさと歩き出した。
「まってよ先生ー、もっと詳しく…減るもんじゃなし、いいじゃんー」
「だーかーら、感動が減るっちゅーに…」
そんな言い合いをしながら、俺とコタ先生は西陽の光に溶けるように学校へ向かった。
この時のコタ先生の言った通り、○○くんのその後が描かれている本は、どんなに探してもどこにも売っていなかった。
諦めて、忘れた頃(もう高校生だったか)に、その物語を描いた作者さんの辞典みたいのが発売されて、それに○○くんのその後のエピソードが丸々載っていて、やっと全てが分かった。
コタ先生の言った通り、泣けるエピソードだった。
「よかったなあ、○○くん」
立ち読みをした時だったから、うっかり涙が出そうになるのをごまかしたくて、無理矢理にいっと笑ってやった。
もちろんその辞典は、お買い上げした。
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