赤い列車に揺られて
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赤い列車に揺られて、タタン、タタン。
長い時間乗車して、停まったのは──泉岳寺。
「こんな所まで来たなあ。品川よりこっちへは来たことないよ」
「あらそうなの? ふふふ」
子育てを終えた中年の夫婦が、水入らずで浅草方面へ向かっていた。
スカイツリーの日時指定券を、結婚30周年祝いで子供達からプレゼントされたので、スカイツリーの入場予定時刻まで浅草寺近辺を散策する事にしているのだ。
「えーと、このまま乗っていっていいんだよな?」
「そう。相互直通運転ですって。便利ねぇ。昔は乗り換えが複雑で大変だったのに」
「ふーん?」
妻は若い頃好きだった男性と、今日と同じように浅草へ出掛けたことがある…
あの時は、この泉岳寺で降りて、別の路線に乗ったなぁ…
少し迷子になってしまったのも、今ではいい思い出。
発車音が流れて、電車はゆっくりと泉岳寺を後にした。
「浅草寺…有名だけど何があるかな?」
「仲見世通りのお土産屋、いっぱい見ましょうね。全部回りきれるかしら?
美味しいものも沢山あるのよ。あのもんじゃ屋さん、まだあるかしら?
あと時間があれば、人力車とか、隅田川の水上バスなんかもいいわねぇ。花屋敷も、大人でも楽しめるわよ」
いつもは聞き役でおとなしい妻が、今日は何故か饒舌だ。
「やけに詳しいな…しょっちゅう行ってたのか?」
「え? そういうわけでもないけれど。二回くらい。すごく昔の事よ」
「もしや…男と行ったとか?」
「えっ?(笑) …さあ? どうでしょう(笑)」
夫の鋭い考察に、びっくりを通り越して笑えてきた妻。
「あっなんだその反応は。白状しないと…こうだっ」
「きゃあ! やだ、やめてよ~、あっはは!」
夫がこちょこちょと脇腹をくすぐってきたので、妻は身をよじりながら夫の肩を叩いた。
夫のちょっとのヤキモチが、少しばかり嬉しい妻だった。
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