赤い列車に揺られて
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赤い列車に揺られて、タタン、タタン。
降り立った駅は──大森海岸駅。
「えええ…ほんとに行くの?」
弱々しく呟く女子高生のアズサに、
「あったり前! ここまで来たんだから、会わせて貰わなきゃ意味ないでしょ」
「うちらにも出逢いを提供してくれなきゃ! ねー?」
やたら押しの強い、ハイテンションの友達ふたりがワイのワイのとはしゃいだ。
彼女達の学校が今日遠方の遠足で、隣の隣の県の水族館で現地集合現地解散だった。その帰り道の途中に、付き合っている彼氏の通う男子校があるとうっかり漏らしてしまったのが始まり。
「でも…会えるかどうかわからないよ? もう家に帰ったかもしれないし…部活の最中かもしれないし…」
そうこうしている内に、その彼氏の高校が見える所まで来てしまった。
「あーちゃん、カレシ部活ナニ?」
「サッカー部…」
「あっ、あそこのグランド! ちょうどサッカーしてんじゃん!?」
金網を挟んで少し遠くにサッカーグランドがあって、部員達が活動をしていた。
見慣れない制服の彼女達を、下校中の男子校生達が物珍しげに眺めながら歩き去っていく。
その視線が気まずくて俯くアズサと、全く気にせずはしゃぎまくる友達ふたり。
「あーちゃん、どれよ? カレシ」
「うーん…」
あまり視力がよくないアズサは、目を思いきり細めて彼氏の姿を探した。
すると、向こうから駆け寄ってくるひとつの影。
「アズサ!? やっぱりアズサだ! なんで? どうしてここにいるの!?」
「ナオくん」
彼氏のナオトだった。あんな遠くから、アズサだと分かったのだ。
友達ふたりは顔を見合わせてニヤーッと笑って、
「カレシさんこんにちは。うちら、あーちゃんの高校の友達です。
うちら用があるんで先に帰るけど、あーちゃんはカレシさん待ってるって言ってるんで。
じゃーねあーちゃん、また明日!」
と言って、スタスタと駅の方へ歩いて行ってしまった。
「アズサほんと…? 待ってくれるの…?」
「…ウン、ナオくんがいいなら…」
お互いに忙しくて、付き合っているのになかなか会えないでいるとこぼしたのを聞いていたあのふたりが、気を利かせてくれたんだ。
アズサはふたりに心から感謝しながら、金網越しにナオトと指を絡めた。
…