宙に手を差し伸べたら
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宙に手を差し伸べたら。
「新婦、入場です」
神父様が高らかに言うのを、背中で聞いた。
おれは、開かれた重厚の扉の前で父親の肘に手を添えるはるこを、真っ直ぐに見つめた。
おれの、綺麗な花嫁。
視界の端に、おれの母親が鼻を真っ赤にして泣いているのが見えて…それが伝染っちゃったか、おれの胸の奥もじんと震えた。
はるこの父親がはるこの手を下から取って、静かにおれが差し伸べる手に乗せてくれた。
極上の笑みをくれながらおれの肘を掴むはるこを、神父様の前へ連れていく。
神父様の祝詞はぶっちゃけほとんど聞いてなくて、誓約書への署名と指輪の交換、誓いのキスの時だけはそつなくこなした。
「新郎新婦、退場」
お祝いに駆けつけてくれたゲストに向けておれ達は深々と頭を下げて、はるこが歩いてきたバージンロードを、今度はおれも一緒に踏み歩く。
「おめでとう、かなた! おめでとう、はるこ!」
フラワーシャワーがおれ達に降り注いで、その中に、綺麗な真っ青の花びらひとひら。
サムシングブルーなんてのを聞きかじっていたから、思わず手を伸ばしたら、はるこも同じように手を伸ばして、指と指がガチンとぶつかった。
「いたた…(笑)」
おれ達は苦笑いをしながら、また歩きだした。
掴み損ねたと思ったら、はるこの手にしっかり青い花びらが握られていた。
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