宙に手を差し伸べたら

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 宙に手を差し伸べたら。





「かなた見て、すごく近く見える。手で掴めそう」

 大学の仲間内で山奥のイルミネーションを見に来て、人がごった返していたから、おれとはるこはあっという間にはぐれた。

 仲間たちと合流しようと、一旦人波から外れて電話を掛けようとしたら、はるこがそんな事を言った。

 降り注ぎそうなほどに澄んでよく見える満天の星。イルミネーションよりずっとずっときれい。

 それに向かってはるこが手を伸ばして、グーパーと握ったり開いたりしていた。

 おれはその手を上からそっと重ねて、はるこがえ? と顔を上げた時に、唇も一緒に重ねた。

 重ねた手がゆっくりと降りきると、唇もそっと離れた。

「かなた



 わたし





 …はじめてなんだけど…」

 そう言ったはるこの目は潤んで、頬をめいっぱい赤く染めて、視線を下にさまよわせた。

 胸の奥がくすぐられて、おれははるこの両頬をそっと挟んで、また唇を合わせた。

 おれの手にはるこの小さく柔らかな手が置かれて、キスの許可をくれたようだった。



 もう、仲間たちのとこには戻らないでいいか。



 おれとはるこの、初めてのキスの思い出。





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