宙に手を差し伸べたら

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 宙に手を差し伸べたら。





 仲間と外で遊んでいる所を、たまたまクラスの、一匹狼のツンケンしたメガネ女子が通りかかって、悪戯心が沸いて「いいもんやろうか」と開かせたその子の手の平に、さっき捕まえたナメクジをポトン。

「ぎぃやあぁ~~!!」

 断末魔ってくらいの、ばかでかい声。

 至近距離で叫ばれて耳がキーンと鳴っている間に、仲間達はギャハハと笑って何処かへ散り散りになった。

 そしてその子は、空いている方の手でメガネを外して、そのまま手の甲で目尻を拭きながら、鼻をスンと鳴らした。

 やばい、と思ったおれ。

 泣かしてしまったっていう後味の悪さと、こいつメガネないとこんな可愛いんだっていう発見。

 動けないでいると、その子はキッとおれを睨んで、

「ばっかじゃないの」

 すぐに自分のキャラを取り戻して、手の平のナメクジをぺいっとすぐそこの茂みへ投げ捨てた。



 こんな事が初恋のきっかけなんて、誰にも言えやしない。





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