宙に手を差し伸べたら
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宙に手を差し伸べたら。
「つめたっ…」
手より先にわたしの頬に打ち付けた、一粒の水滴。
デコピンかしっぺでもされたみたいな衝撃を、わたしだけではなく地面も受けていた。
居残りを食らってやっと下校出来たわたしに、雨が容赦なく降り注ぐ。
朝はあんなに晴れていたのに。
でもおかあさんに「傘持っていきなさい」と言われていた。
馬鹿馬鹿しいと思ってわたしはそのまま出たのだが…
「もう~、やだぁ~」
下校ルートの途中に大きなブナの木がある、そこで一旦雨宿りをした。
雨は弱まるどころか、ますますひどくなる。
ザザザザと樹の葉っぱが雨を受け止める音と共に、遠くから雷鳴が聞こえて、わたしの体はこわばった。
わたし、雷だいきらいなのに…
耳を塞ごうと両手を上げた時、
「…あっ、いた! おーい!」
雨湯気の向こうにおかあさん、小さな弟を抱っこ紐で抱えてこちらに駆けてきた。
「ばかだね、傘持ってけって言ったのに。ほら、早く帰ろう」
おかあさんはわたしの傘をポンと広げて、私に差し出した。
「おかあさん、わたし、雷きらい」
「うん、かあさんも、雷きらい」
わたしとおかあさんは手を繋いで、空いた方の手は傘を持ちながら片耳をふさぐ。
そんな変な格好に笑いながら、わたしとおかあさんは家に急ぎ足で帰った。
途中で雷が大きい音で鳴ったけど、全然平気だった。
…