宙に手を差し伸べたら
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宙に手を差し伸べたら。
指先にちょんと、やわらかい何かが触れて、わたしは反射してそれを握った。
「わあ、みてよ…ぎゅって…してくれたぁ」
「あっずるい、俺にも俺にも…」
そんな声がしたと同時に、反対の手の指にちょんと別の感触、また反射してそれを握る。
「えへへぇ…かーわいいなぁ…」
「ねっ…まだ、見えてないはずなのにね…わかってくれてるのかなぁ…」
そう、わたしはまだ視界が霞んでよく見えないけれど、声と匂いとぬくもりでわかるのだ。
この人達が、生涯をかけてわたしを守るということを。
「あーっ…ほんと、かわいすぎ…嫁にやりたくねぇ…」
「ふ…っ、今から、そんな先の心配?(笑)」
低い音と高い音の囁くようなハーモニーを聴きながら、わたしはウトウトとしだした。
おなかに暖かいものが乗せられ、その上からトン、トン、と優しいリズムを刻まれる。
「おやすみ…生まれてきてくれてありがとう…」
「あなたを一生…守っていくからね…」
この素晴らしい言葉を聞かせてくれたお礼に、わたしはもう一度握り、「あうー」と言った。
…