waiting
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芽衣子のその微笑みに、俺はクラクラ。
握った手を頬から下に下ろして恋人つなぎをした隙に、芽衣子の唇に柔らかくキスをした。
芽衣子はビックリした顔をしたけど、ふふっとすぐに照れ笑いをした。
「…行きますか」
「…うん!」
こうしてやっと、俺達は雪まつりの景色の中へ溶けていった。
雪まつり当日にふたりで歩く事、ずっと叶えたかった。ゆっくりゆっくり歩いて、完成された雪像たちを感嘆の眼差しで芽衣子と眺めた。
どこかお店に入ってゆっくりごはんを、というのも時間が勿体無くて、
「ねえ一幸、いいにおいがする。あっ、こっちもおいしそう!」
芽衣子も通り沿いに並ぶ屋台に無邪気に目移りするので、買っては食べ、買っては食べを繰り返した。
今日は色んな事があったけど、芽衣子が隣で笑ってくれるだけで…それだけでなんかいい。
やがて…通りを歩く人もまばらになって、俺達は会場の端っこまで辿り着いた。
「…全部見きっちゃったね」
「うん…今何時?」
「えっと…午後10時18分。
一幸、明日から出張だよね? 早く帰って寝ないと…
ケンジさんが、連絡くれたら迎えにいくって言ってくれてたから、一幸も乗って家まで送って貰おう」
そうだった。
じゃあ、芽衣子との時間…
これで終わり…
……
……
「ちょっと、待って、芽衣子」
スマホで電話を掛けようとしている芽衣子の腕を咄嗟に取った。
「うん?」
「電話して」
「? うん、今ヤスコん家に掛けるとこ…」
「今日は帰らないって言って。
…俺の部屋に来てよ…」
俺が熱っぽく言ったのを、芽衣子はスマホを耳に宛てたまま頬をめいっぱいに赤く染めて、こくりと受け止めた。
そして、電話が通じて「もしもしヤスコ? あのね…」と、腕を掴む俺の手の上にふわりと手を重ねながら、電話の向こうの靖子に話した。
…ずっと一緒にいたいよ、芽衣子。
芽衣子との結婚を明確に思い描くようになったのはきっと…この日からだ。
…