waiting
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一緒にいる誰かが、芽衣子を車に押し込めようとしている…!?
「あのっ、その子が何かお世話になりましたか…!?」
まだ大分距離があったけど、息が止まりそうになりながら俺は芽衣子と男に向かって叫んだ。
二人は同時に俺を認めて…芽衣子は泣きそうに顔を歪めて、男はちっと舌打ちをした。
「一幸…!」
二人の前へ辿り着くと、芽衣子は掴まれていた腕を振りほどいて俺に駆け寄った。
先程の二人の様子で状況を少し理解した俺は、駆けてきた芽衣子をそのまま背中に隠した。
「あのっ…はあっ…俺との待ち合わせだったんで…
連れて…いくのは…はあっ…勘弁して下さい…」
本当はかなり頭に血が上っていたんだけど、芽衣子に怖い思いをさせたくないのと、息が整わない内に喋ったので、かなりへりくだった言い方になった。
そんな俺を男はしばらく見つめて、やがてガシガシと頭の後ろを掻きだした。
「はあ~…
あんたさあ、どんな事情があったか知らないけど。
メイコちゃん、ずーっと立ってたんだぜ? 傘も差さないでさ、お店に入ろうともせずにさ。
なのにあんた、全く連絡もせずにさ…ばっかじゃないの。
こんなかわいい子、誰もほっとかないよ? まちがいが起きたって文句言えねーっての。
…メイコちゃん、怖がらせてごめん」
そう言い切って、男はバタンと車に乗り込んで、走っていってしまった。
車が見えなくなると、一気に力が抜けて地面にへたりそうになったのをぐっと堪えて、後ろの芽衣子を振り返った。
「芽衣子、芽衣子ごめん、連絡出来なかった上にこんなに遅くなって。
会社戻った後でまた色々あって…いや言い訳なんかいらないよな。
こんなに、雪被るまで待たせて…不安にさせて、本当にごめん」
芽衣子が怒ってもそれは当然だ、別れてって言われるかもしれない、俺は覚悟した。
「…一幸…」
俺に一歩近づいて、そっと頬に手を宛てた芽衣子。
氷のような冷たさの手、ちくんと胸が痛みながら、それに俺の手を重ねた。
「一幸…
お仕事、お疲れ様」
芽衣子は、待たせた俺を責めもせず…
極上の笑顔をくれた。
…