waiting
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閉じ込められていた時間は10分にも満たなかったと思う、でも、俺には途方もなく長く思えた。
俺の嫉妬の声にすっかり萎縮したらしい山下と長田さん、の割りには、さっきより密着しちゃいませんか? 目が闇に慣れてシルエットだけは分かって、俺は慌てて視線を外した。
と、そこでパッと電気が点いて、
【──お待たせしました、無事電通致しました。ご迷惑をお掛けしました──】
社内放送を聞きながらノブを回したら、ガチャリとドアが開いた。
「よかった開いた、山下戸締まりよろしく!」
「あっはい、相田さんお疲れ様でした!」
俺が肩越しに見た瞬間、二人はパッと離れて声を揃えた。
くそ、見せつけちゃって、まあいいけど、と思いながら俺は部屋を出て、ロッカーへと急いだ。
午後8時48分。
積雪した道を駆け足で踏みつける、降りしきる大粒の雪に白い吐息をかけながら。
電話を掛けたけど出ない、LINEも既読が付かない。
芽衣子、芽衣子、怒って帰っちゃった? それともまだ待っていてくれてる…?
雪まつりの会場へ流れていく人波を掻き分けながら、俺は待ち合わせの時計台へ向かっていく。
時計台が遠くへ見えたところで、もう一度コールした。
やっぱりまだ出ない、でも鳴らしっぱなしにして、耳にスマホを宛てたまま走った。
──芽衣子、いた!
…あれは…誰??
ーーーーーーーーーー
「…え?」
(それは、どういう…)
「メイコちゃん…
来ない彼氏をいつまで待つつもり?」
「そんなこと…彼は必ず来ますよ」
(なんでそんなこと言うんだろう…)
「ほら、僕そこで停めてる車で来たから…
少しドライブでもどう?
雪まつりの街並みを見せてあげる」
(なんだろ…なんか…)
「いや、あの、いいです、
彼が来るまでここで待ちます」
「…いいから乗れよ…!」
(…っ、コワイ…
一幸…一幸…たすけて…っ)
…