waiting
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時計台は俺の職場からわりと近い所にある。
芽衣子にLINEを送った後、時計台の前を足早に通り過ぎて、オフィス街の一画に足を踏み入れた頃、大粒の雪が空から静かに舞い降りてきた。
「わ…こりゃすぐに積もるかな?」
芽衣子は無事に来れるかな、そんな事を頭に掠めながら、俺は会社のビルに駆け込んだ。
会社ではプライベート電話は禁止、専用のロッカーにスマホを入れて鍵を掛け、その鍵は受付に預ける。
雪で濡れた頭やコートを、手持ちのタオルハンカチで軽く拭いているところで、
「おお相田、もう戻れたか! お前が一番多く任されたのになあ、優秀優秀」
上司の末次さんがエレベーターから降りてきて、俺を見るなりそう言った。
「お疲れ様です、只今帰りました。えっ、末次さん今から外出ですか?」
「そうなんだ、ひとつ手こずっている社があってな…サポートせにゃいかん。
相田、お前が戻ってくれて助かった。山下のサポートの続きを頼んでいいか?
あともう少しで修正完了だから…二人で最終確認を頼む。
終わったら俺のケータイに連絡してくれ、それで退社していいからな、宜しくな~!」
「えっ、あっ、はい、了解です、いってらっしゃい!」
バタバタと会社を後にする末次さんの背中を見送りながら、俺は腕時計を見た。
午後7時を少し過ぎたところ。
まずいことになったと思った…待ち合わせ時間に間に合うか…!?
ーーーーーーーーーー
「ケンジさんごめんね、お仕事から帰った早々
送って貰っちゃって…」
「いやいや、気にするなよメイちゃん。
はるばる遠くから来てくれた
かわいい従妹の為ならば。
雪大分降ってきたし、
今日から雪まつりだし、
地下鉄はきっと混んでるからね、
車の方が断然早い」
(車道も積もり出した…
こっちのさらさらした雪も久しぶり。
紙吹雪みたいに舞ってるのが
キレイだなあ…)
「おっと…なんだ? 工事中?
もう~、すぐそこなのになあ」
「あっケンジさん? ここで降りるよ。
もう近くなんでしょう?」
「えっ。大丈夫かメイちゃん」
「大丈夫大丈夫。ありがとう。
早くヤスコの所に帰ってあげて」
「そうか? わかった。
ほらあそこ、もう見えてるから。
相ちゃん君によろしくな。
帰る時連絡くれたら、迎えに行くから」
「ふふ、相ちゃん君って(笑)
うんわかった。本当にありがとう。
運転気をつけてね」
…