waiting

4/17ページ

前へ 次へ


 芽衣子が無事にこちらへ降り立ったのを知って、ほっと息をついた。

 空港から靖子の家まで1時間以上かかる、電車を何本も乗り継ぐ。

 実は靖子…一昨年の夏に一回り近く年上の会社の先輩と結婚して…今、妊娠6ヶ月。

 今回の来訪は俺との時間の為でもあるけど、靖子の様子見も兼ねていた。

 芽衣子は雪まつりの後も数日靖子の家に滞在するのだけど、俺は明日から泊まり出張…戻る頃にはとっくに芽衣子は家へ帰る。

 だから、今日存分に芽衣子と過ごすつもりだったのに…予定外のトラブルにまた溜め息をついた。

 けど、いつまでも引きずってられない。今の俺に出来るのは、巡回を迅速に、でも丁寧にやり抜く事。



 芽衣子と俺が現在同じ地を踏んでいる事が、俺のパワーになった。

 巡回はトントン拍子に進み、陽はもう暮れかけて街灯が灯り始めたけど、残りの社数がわずかになってゴールが見えてきた。

 思ったより早く芽衣子を迎えに行けるかも。

 さて次の社は…と、信号待ちでメモをめくったところ、こんな声が横から飛んだ。



「あれっ…
 相田くん? 相田くんだよね?」



 俺は隣の人物を見て、あっと声を上げた。


ーーーーーーーーーー


「メイ! よく来たね、迷わなかった?
 アタシがこんなお腹でなけりゃ、
 空港まで迎えに行ったのに」

「わあヤスコ、お腹大分おっきいね!
 順調そうでよかった。
 うん大丈夫だったよ、結婚式の時に
 一度連れてって貰ってたから、
 ちゃんと覚えてたよ。
 ケンジさんは? 今日お休みって
 言ってなかった?」

「それがさー、会社で何かトラブルが
 あったとかで行っちゃった。
 まあしょうがないよねー、上の立場の人だし」

「そうかあ。
 一幸もね、トラブルに遭ってるって」

「なぬ、相ちゃんも? まったくー…
 まさかメイをほったらかしにするんじゃ
 ないでしょうね」

「あはは、それはないと思うけど…
 でも、もしもの時はその覚悟もしないとね」

「まったくメイは…
 相変わらず相ちゃんには激甘だね。
 調子に乗らせたらダメだかんね?
 ほらほら、早く奥に入って。お茶するよ」

「はあい、おじゃまします。
 ふふ…ヤスコは相変わらず
 一幸には辛口だなあ」





4/17ページ
いいね!