FALL
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カラオケは2時間フリードリンク+軽食付きのコースだったので、あっという間に時間が過ぎ、お腹も適度に空いてきた。
ゾロゾロと店から出てきた俺達、次は二次会、飲み屋で食事という運びになった。
坂本が手際よくどこかお店に電話を掛けて、席の予約を取ろうとしていた。
そんな折り、芽衣子ちゃんを見た。
ふーっ、と白い息を吐きながら、空を仰いでいる。
ダッフルコートに、モコモコの長いマフラーをゆったり首に巻いて、口元が少し隠れているのが、なんかいいなぁと思った。
「はあぁー。やっぱりこっちは、寒いですねぇ」
俺に気付いて、芽衣子ちゃんが言った。
冷たい空気に晒されて、白い肌に赤みが差していた。
「ねえ…芽衣子ちゃんは、うちの大学の子、じゃあないよね?」
「あれ? ヤスコ、言ってませんでしたか?
私、ヤスコの従妹なんです。○○県に住んでます」
わ、すげえ遠い所。飛行機でわざわざ来たって事? 靖子に会いに?
「今日来たばっかりなんだけど、ヤスコに会うなりここに連れてこられちゃった」
「ははは。アイツ、けっこうゴーインだもんな。付き合わせちゃって悪かったね…」
靖子以外誰も知らない輪の中に芽衣子ちゃんを入れてしまったのが、すごく申し訳なく感じた。靖子にメールを飛ばした自分が原因なのだから。
「ううん」
でも芽衣子ちゃんは、予想もしない事を口にした。
「私、大学行ってないから、こういうの初めてで楽しかったし…
…憧れの相田さんにも、会えちゃったしね!」
え。
え?
…憧れる?
…俺を?
芽衣子ちゃんを真っ直ぐに見ていられなくなって、俯きながら後頭部を掻いた。
「芽衣子ちゃんも行くっしょー? 二次会!」
予約の電話を終えた坂本が、少し離れた所から声を掛けた。
…