FALL

87/87ページ

前へ


「相田さん?」

 不思議そうに首をかしげる芽衣子ちゃんを横目に、旅行バッグを地面に下ろす。

 そして、芽衣子ちゃんの頬に、手を滑らせた。

「…ごめんね?
 …少し…充電させて…」

「…んっ…いいよ…」

 芽衣子ちゃんが言い終わらない内に、その華奢な体をぎゅっと抱きしめた。

 抱きしめながら髪を撫でていたら、シュシュがスルッと落ちてしまって、鎖骨が隠れる程の長さの、綺麗な黒髪がさらりと揺れた。

「…伸びたね…カワイイ…」

「相田さんは…長い方がスキ…?」

「ん? んー…芽衣子ちゃんは、どっちでも似合うから、決めらんない」

「もぉ…」

 顔を真っ赤にする芽衣子ちゃんが可愛すぎて、頬を包んでキスをしようとして…寸前で止めた。

 息がかかる、至近距離。

 潤んだ瞳で、芽衣子ちゃんが問いかける。

「…どうしたの…?」

「……あのさあ……
 もう1年だし…敬語じゃなくなってるのに…



 ……まだ、相田さんなの……?」

「…えっ…」

 芽衣子ちゃんが目を丸くした。

「…そろそろ…よくない…?
 …名前…呼んで…?
 …呼んでくれなきゃ…



 ……このままだよ?」

「……えぇっ……?」

 イジワルな、俺。

 完全に芽衣子ちゃんで遊んでる。

 でも、これは自分にとっても生殺し。

 早く、唇に触れたい。

「~~~っ…どうしても…?」

「…どうしても…



 ……言って?…メイコ……」

「…も…! だから、それ、ズルイから…!
 そんな、やさしく…呼んじゃヤダ…
 ……
 ……



 ……か、ず、ゆき……」

「…よくできました…」

「……ンッ!……」



 ふわりと



 柔らかく唇を当てた



 1年前と同じ…いや…



 あの時以上に幸せで穏やかなキス



 逢えなかった時間を埋めるように



 お互いの唇を求め合った





 相田一幸

 岡田芽衣子



 青い恋愛、真っ只中です










FALL〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2014年11月25日~2015年1月7日

[改稿終了日]
2021年6月13日

[執筆BGM]
あいのうた / Something ELse






よければこちらもどうぞ
【FALL】あとがき
【FALL】おまけ





87/87ページ
いいね!