FALL

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 7時半を少し回って、支度を済ませた芽衣子ちゃんは寮から出た。

 俺は、部屋の窓から外の様子を窺う。

 本当は外まで見送ろうとしたんだけれど、別れがたくなるからと、芽衣子ちゃんに止められた。

 車のすぐそばで、靖子がタバコをふかしていた。

 ふー、と長く煙を吐き出しているところへ、芽衣子ちゃんがそこに辿り着いた。

 靖子は携帯灰皿を胸ポケットから取り出して、タバコの始末をしながら、芽衣子ちゃんに何か言っている。

 妙に冷たいような表情をしているので、芽衣子ちゃん、怒られているのかな? と心配になった。

 俺のせいなのに。

 思わず、ガラリと窓を開ける。

 その音に、芽衣子ちゃんと靖子が同時にこちらを向いた。



 …芽衣子ちゃんのほっぺ、真っ赤。



 靖子は俺と芽衣子ちゃん、そしてまた俺を見て、パタパタと顔を扇ぐジェスチャーをして、ニヤリと笑った。

「ばっ……!」

 拳を振り上げる真似をして、靖子に威嚇した。

 靖子は、キシシといつものいやな笑いをして、車に乗り込んだ。

(相田さん)

 遠くで声は聞こえないけれど、口の動きで分かる。

「うん?」

 窓に身を乗り出して、芽衣子ちゃんを見つめる。

 芽衣子ちゃんも、俺をじっと見つめて、そして、にこっと微笑んだ。



(ダ、イ、ス、キ)



 そう、ゆっくりと口を動かして、大きく手を振り、助手席に乗り込んだ。




 靖子の車が去っていった方を、いつまでも眺めていた。



 最後の最後まで



 芽衣子ちゃんに心を掴まれっぱなしだった





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