FALL
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握っている芽衣子ちゃんの手が固くなるのが、伝わった。
今までなら、困らせてごめんとかいやだよねとか、言っただろう。
でもこの距離を、もうこれ以上開けるなんて、いやだった。
もう一度言った。
「この数日間で、君の事がすごく好きになった…」
「……」
「一昨日は…急にあんな風にして…ごめんなさい」
「……」
「…怖かっ…たでしょ…?」
その言葉を聞いた芽衣子ちゃんが、途端に俯いた。
やっぱりそうだったんだと、分かってるのに動揺した。
でも俺は、言葉を続けた。
「それならどうして…?
どうしてここにいるの…?
飛行機はどうしたの…」
また、沈黙が流れる。
芽衣子ちゃんの言葉を待つか、また自分が言葉を続けるか思案していると、芽衣子ちゃんがポツリと言った。
「……だった」
「…えっ…?」
聞き取れなくて、少しかがんで芽衣子ちゃんの顔に耳を寄せる。
同時に芽衣子ちゃんが顔を上げて、至近距離で目が合った。
ドキン。
胸に置かれた芽衣子ちゃんの手に、この鼓動がきっと伝わったはず。
芽衣子ちゃんは切なそうに、苦しそうに、言った。
「心配だった…
ヤスコが…相田さんが倒れてるって…
どうする? って…
その時はもう、空港にいたの…
でも…
好きなんだもん…
ほっとけないよ…」
…