FALL
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「…まだ…寝てないとダメですよ…」
そう言った芽衣子ちゃんの顔は、心配そうに、でも、困惑してる風でもなかった。
「なに…してるの…?」
芽衣子ちゃんの袖を離さないまま、言った。
俺は、色んな意味を込めて聞いたつもり。
でも芽衣子ちゃんは、ほんの少ししか読み取らない。
「相田さん、昨日、何も食べれなかったでしょう?
おじや、作ったから。
あとで、食べて下さい。
…お味の保証は、しないけど」
はにかむ芽衣子ちゃん。可愛くて仕方ない。袖を摘まむ手に力がこもる。
「ん…ありがと…
リンゴも…ありがと…おいしかった…」
「はい…」
「……」
「……」
沈黙が流れる。
お互いに相手の目を見て、感情を読み取ろうとしている。芽衣子ちゃんもきっとそうだって、確信があった。
でも、先に視線を外したのは、芽衣子ちゃんだった。
「…相田さんの熱、下がってよかった。
まだ、寝てて下さい。まだ5時半ですよ…
ここ片付けたら…私行きますね…」
そう言って俺を布団に促そうと、俺の胸を軽く押した芽衣子ちゃんの片手を…袖を摘まんでない方の手でそっと覆った。
びっくりした顔で俺を見る、芽衣子ちゃん。
はあ、と息をついて
ぎゅっと芽衣子ちゃんの手を包んで
芽衣子ちゃんを真っ直ぐに見つめて
言った
「君が好き」
…