FALL

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 芽衣子ちゃんはリンゴのすりおろしたのを持って戻ってきた。

「寝たままでも食べられますか…? 私が口まで運びますから…」

 再び頷くと、ひと掬いしたのを口元まで持ってきてくれた。

 腫れた喉に果汁が染み渡る。

 パク…ゴクリ…パク…ゴクリ…

 咀嚼の音だけが響く。

 全部平らげると、芽衣子ちゃんはニコッと笑って、器を流しへ戻しに行った。

 そこでまた、袋の中をガサガサと探り、取り出したのはゴムの枕に氷、タオル。

 氷を数個枕に入れて、更に水道水を流し込む。キャップを閉じて、タオルをくるりとひと巻き、それを持って戻ってきた。

 いつの間にかペットボトルのそばに置かれていた、寮のおばちゃんから受け取ったという頭痛薬を1錠手に転がして、

「相田さん、起き上がれますか? 薬飲むのは、体起こした方がいいかも…」

 そう言って、俺の手をそっと握った。

 ボーッとする頭で、芽衣子ちゃんの柔らかな手を少しばかり支えにして、気だるく上半身を起こす。

 薬を摘まみ、口へ放り込む。水を勢いよく流し込む。

 一連の流れが済んでほっとしたところで、急に睡魔が襲った。

 頭はまだズキズキと痛かったけれど、眠れそうな気がしてきた。

 目頭を押さえていると、芽衣子ちゃんがさっきまで使っていた枕と先程の冷え枕をすり替えて、ゆっくり、俺の頭を後ろ手で支えながら寝かせてくれた。

 枕の冷たさと揺らめきを気持ち良く感じた所で、まともに芽衣子ちゃんと目が合う。

 至近距離。

 手をちょっとでも伸ばせば、その頬に触れられる。

 でも、だるくて眠くて、手が…上がらない。

 堪えられなくて、ふっと目を伏せた瞬間

 熱い息と一緒に

 芽衣子ちゃんの唇が

 俺の唇に

 降りてきた

「……」

「……」

 突然のキス

 夢なのか現実なのか分からず

 あ…芽衣子ちゃんに風邪がうつる…

 そんな事を考えながら

 俺はそのまま…意識が落ちた





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