FALL

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 芽衣子ちゃんはしばらく目をパチクリして、突然立ち上がった。

「…えええ!? あの【帽子】を書いた…相田さん!?」

「そうだけど…読んだの? あんなの(苦笑)」

「読みました! ヤスコに勧められて…感動したんですよ!?」

 興奮した様子で頬を両手で包む芽衣子ちゃん。

「靖子サン…アナタ、勝手にヒトの作品を見せないで下さいよ…恥ずかしいんですけど」

 じろりと、後ろの靖子を軽く睨む。

「あら~、トモダチなんだからいいじゃん♪」

 全く悪びれない靖子。

 高校の最後の文化祭で、文芸部だった俺は、部活動の集大成としてひとつの短編を書いて、他の部員の作品と共に冊子に載せて配った事がある。

 あれを何故だか、靖子がやたら気に入ってくれていた。

 まさか誰かに見せていたとは…もう3年も前の若気の至り、今となっては恥ずかしさしかない。

「あの、相田さんは今も書かれているんですか?」

 芽衣子ちゃんが座りながら聞いてくる。

「いや…大学に入ってからはさっぱり」

「そうなんですか…」

 ふっと目を伏せた芽衣子ちゃん、でもまたすぐに俺の目を真っ直ぐに見て、

「でも、いつかまた何か書いたら…私にも見せて下さいね」

 あの明るい笑顔でそう言った。

 時が止まったみたいに、芽衣子ちゃんの事を見つめてしまった。





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