FALL

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 ~♪



 芽衣子ちゃんと気まずく別れて、一夜が明けた。

 降りしきる雪の中を、傘も買わず、歩いて寮に戻ってきた自分。

 頭はビショビショ、上はロングジャケットのおかげで平気だったけれど、膝から下はもう悲惨だった。靴の中の感触はもう思い出したくもない。

 そんな状態で…よくタオルで拭かず、そのまま布団に転がり込んだ。

 その結果…高熱を出してしまった。喉をやられ、頭がボーッとする。

 ~♪

 鳴り止まない着信音、ほっとけばいいのに、出てしまった。

「はい…もしもーし…」

『ばかなのか? 相ちゃんは』

 靖子だった。

 時計を見る。9:13。え、仕事は?

 聞けば、外回りで移動中だという。

『うちの従妹になにしてくれてんのさあ。
 つか、なんにも話さないけど、あの様子はただごとじゃあないよ。
 …ひっどい声だね?(苦笑)』

「あー…風邪。
 …芽衣子ちゃん…怒ってた…?
 …ぎゅって…したんだ…」

『……』

 靖子が黙った。

 なんとなく、目を丸くしている姿が想像出来た。

『はあー…そういうこと。
 あのね、相ちゃん。あの子昔ね、おふざけだったんだけど、親戚のおじさんに抱きしめられた事あって。
 やめてって泣いたんだけど、離してくれなくてね。
 それがトラウマになってるところがある』

 ひと息おいて、靖子は続けた。

『メイコ、今日の11時の飛行機だよ。
 …どーする?』

「……」

 今度は自分が黙る番だった。

 どーする、だって?

「……。
 38度だし。そうじゃなくても、大学あるし」

『っそ。じゃ、まあ、お大事に』

 ブツッ。ツー、ツー。一方的に切られた。

 靖子の呆れたような声が耳に突く。

 俺が、芽衣子ちゃんを怖がらせたんだ。

 靖子の話を聞いて、罪悪感しか残らない。

 どうして…冷静でいられなかった?

 芽衣子ちゃんの中で、俺との思い出は全部黒く塗り潰されただろうな。

 俺は?

 俺は…

 ……

 体内に籠った熱を吐き出すように、はあっ、と深く息をついた。

 そして、少々乱暴に、ケータイを床へ放った。





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