FALL
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──君が好き。
降りしきる雪の中で、芽衣子ちゃんを抱きしめながら、心の中で何度も呟く。
数日前に会ったばかりの君を、もうこんなにも好き。
色んな表情を見せてくれる君が、好きでたまらない。
この気持ちを、君に見せていい…?
同時に、好意を持たれると距離を置いてしまう自分を思い出す。
それと同じに、芽衣子ちゃんが俺の気持ちを知ったら、芽衣子ちゃんは俺から離れてしまうだろうか。
この数日間で築いてきた俺と芽衣子ちゃんの思い出が、一転していやな物となるんだろうか。
なるんだろうな。
でも。
芽衣子ちゃんのこの、抱き返す両手の意味は何…?
大きな不安と、ちょっとだけの…期待。
は…と芽衣子ちゃんが小さく息を吐いたのをきっかけに、髪の毛に差し入れていた手と、肩に回していた腕を緩めた。
すると、密着していた頬が離れ、すうっとひんやりした空気が流れ込んだ。
背中に回されていた柔らかい感触も消えて、俺と芽衣子ちゃんに隙間が出来た。
「…私…帰らないと…
も…ヤスコ待ってるから…
あ…の…ありがと…ございました…
じゃ…サヨナラ…」
俯いたままそう言って…
芽衣子ちゃんは、走っていった…
身体中のあちこちに芽衣子ちゃんの感触が残ったまま
俺は
しばらくの間
そこから動けないでいた
期待は砕け散り
後悔だけが残った
※よければこちらもどうぞ
→【FALL】中間雑談・4
→どさんこタイム・5
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