FALL
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「……」
「……」
雪が降っている空間って、なんでこんなに耳が痛いくらいに静かなんだろう。
何も…言わないで。
言わなければ…ずっとこうして、抱きしめていられるんじゃないか、
そんな都合のいい考えが頭に浮かんでは、いやいやと心の中で首を振る。
芽衣子ちゃんが傷つく。
この抱擁に、何か下心以外の理由をつけなければ、ダメだ。
「芽衣子ちゃん…寒い…?」
おでこを俺の鎖骨辺りにぴったりとつけて、顔を見せないようにしている芽衣子ちゃん、返事は、ない。
その代わりに…
きゅっ…
ジャケットの脇の付け根辺りを少し引っ張られた。
ヤバイ…
色んな何かが…外れそう…
「…俺もね…寒い…
ね…もう少し…このまま…いいかなぁ…」
絞り出すように言うと
芽衣子ちゃんの両手が
ゆっくり…俺の背中に回る
「…あったかい…?」
芽衣子ちゃんの声と言葉に、喉の奥底のフタか何かが開いたような感覚に襲われた。
「…あっ…!」
芽衣子ちゃんが小さく声を上げた時
少し背中を屈めて
芽衣子ちゃんのこめかみから髪の毛へスッと手を差し入れて
目線が合わないように
頬と頬をくっつけた
もう片方の手で
芽衣子ちゃんの肩を抱く
芽衣子ちゃんの手が、俺のジャケットの背中をきゅっと摘まんだ
芽衣子ちゃん
拒まないの?
この小さい震えは、どう捉えたらいい?
俺
どこで止まればいい?
教えて
…