FALL
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今日はもう離さないと…決めた。
手を繋いだ事、芽衣子ちゃんは何も言ってこなかったし、特に驚いている風でもなかった。
時々…無意識に手に力が込もってしまった時、芽衣子ちゃんの手が…柔らかく握り返す。
ちょっとびっくりして芽衣子ちゃんの方を見ると、芽衣子ちゃんは真っ直ぐに前を向いていた。
多分、今、俺、顔が真っ赤だ。
芽衣子ちゃんがこっちを見なくて助かる。
鼓動も恐ろしく速い。
繋がれた手から、芽衣子ちゃんに伝わってやしないかとすら思う。
落ち着け、と、そっと深呼吸をした。
雪まつりの会場は思った通り、明日の本番に間に合うかどうかの瀬戸際の物が何点かあり、作業の人達がせわしなく動いていた。
屋台のテントや機材なんかも、明日からの開店に合わせて畳まれて置かれていた。
「あー…芽衣子ちゃん、なんかごめん。
自分で言っといてなんだけど、見ごたえないよね。
本番なら、ライトアップされたりとかしてキレイなんだけどなぁ」
自虐気味にそう言うと、芽衣子ちゃんが手を繋いでから初めてこちらを見た。
バチッと目が合って、心臓が跳ね上がる。
「いえ! 大丈夫ですよ、楽しいです。
あ、相田さん、あれ滑り台かな?」
「うん、そうみたいだね。明日に間に合うかな?」
「ふふふ、そうですね。ちっちゃい子達が残念がらないといいですね」
そんなたわいのない話をしながら、俺達はゆっくり歩いた。
いつもの、穏やかな空気。
だんだん俺の鼓動も、いつもの早さに戻っていった。
でも、困った
いつも通りに俺に笑顔を向けてくれる度に
君を抱きしめたい…衝動に駆られる
手を繋ぐだけじゃ、とどまらないんだろうか
…