FALL
47/87ページ
送迎バスに乗って、走り出しても考えがまとまらなかった。
前に言ったみたいに、明日空港まで芽衣子ちゃんを見送りに行こうか?
明日もバイトはない、大学もお昼前にひとつ講義があるだけ。
でも、しつこく思われない?
ちらついていた雪がだんだんと大粒になり、道路がうっすらと雪化粧になる。
その様子を窓から眺める芽衣子ちゃん。
時々、ゆっくりまばたきをする、まつ毛の長さが一層際立つ。
視線に気付かれない内に、反対側の肘掛けに体重をかけて頬杖をついた。
芽衣子ちゃんを見ていたいけれど、それはダメ。
空いている右手で芽衣子ちゃんの左手をそっと握りたいけれど、それもダメ。
なんか、手に変な汗かいてきた。
どこを見ていいか分からないでいると、反対側の窓の上に並んで張られている広告の中に、今年の雪まつりのがあって、それに目を留めた。
…あ、明日からなんだな。
こういったイベントにあまり興味がなくて、一昨日マナちゃんに誘われた時も、詳しい日時など全く頭になかった。
雪まつり、子供の頃はよく親に連れていってもらったっけ。
「相田さん? 大丈夫ですか?
昨日と今日と、私の事案内して疲れちゃいましたよね、ごめんなさい」
そっぽを向いたままの俺を気にしたのか、芽衣子ちゃんが話し掛けてくる。
その、下から覗き込んでくるの、反則だから。
「えっ!? いやいや、全然元気だから!
ただちょっと、あれを見てて」
ちらっと目線で、雪まつりの広告のありかを芽衣子ちゃんに知らせる。
「あっ、雪まつりですね。
またいつかここに来れたら、その時はしっかり見たいな」
「ねえ芽衣子ちゃん、芽衣子ちゃんがここに来たのって、アレが目的ってワケではなかったんだね?
だって、明日もう帰っちゃうんでしょ」
「はい…本当は雪まつりに被るように連休を取りたかったんですけど、調整がうまくいかなくて…
明日は午前の便のチケットをとってあります」
「そうかぁ~…」
芽衣子ちゃんとなら、雪まつりの会場を歩いてみたかった。
また、色々な表情を見せてくれるだろうか。
俺の隣で、笑ってて欲しい…
……
「芽衣子ちゃん、あのさ」
思いきって…突然浮かんだアイデアを口にした。
「この後、まだ時間平気?
もしよかったらさ…雪まつりの会場、少し歩かない…?」
…