FALL

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 送迎バスに乗って、走り出しても考えがまとまらなかった。

 前に言ったみたいに、明日空港まで芽衣子ちゃんを見送りに行こうか?

 明日もバイトはない、大学もお昼前にひとつ講義があるだけ。

 でも、しつこく思われない?

 ちらついていた雪がだんだんと大粒になり、道路がうっすらと雪化粧になる。

 その様子を窓から眺める芽衣子ちゃん。

 時々、ゆっくりまばたきをする、まつ毛の長さが一層際立つ。

 視線に気付かれない内に、反対側の肘掛けに体重をかけて頬杖をついた。

 芽衣子ちゃんを見ていたいけれど、それはダメ。

 空いている右手で芽衣子ちゃんの左手をそっと握りたいけれど、それもダメ。

 なんか、手に変な汗かいてきた。

 どこを見ていいか分からないでいると、反対側の窓の上に並んで張られている広告の中に、今年の雪まつりのがあって、それに目を留めた。

 …あ、明日からなんだな。

 こういったイベントにあまり興味がなくて、一昨日マナちゃんに誘われた時も、詳しい日時など全く頭になかった。

 雪まつり、子供の頃はよく親に連れていってもらったっけ。

「相田さん? 大丈夫ですか?
 昨日と今日と、私の事案内して疲れちゃいましたよね、ごめんなさい」

 そっぽを向いたままの俺を気にしたのか、芽衣子ちゃんが話し掛けてくる。

 その、下から覗き込んでくるの、反則だから。

「えっ!? いやいや、全然元気だから!
 ただちょっと、あれを見てて」

 ちらっと目線で、雪まつりの広告のありかを芽衣子ちゃんに知らせる。

「あっ、雪まつりですね。
 またいつかここに来れたら、その時はしっかり見たいな」

「ねえ芽衣子ちゃん、芽衣子ちゃんがここに来たのって、アレが目的ってワケではなかったんだね?
 だって、明日もう帰っちゃうんでしょ」

「はい…本当は雪まつりに被るように連休を取りたかったんですけど、調整がうまくいかなくて…
 明日は午前の便のチケットをとってあります」

「そうかぁ~…」

 芽衣子ちゃんとなら、雪まつりの会場を歩いてみたかった。

 また、色々な表情を見せてくれるだろうか。

 俺の隣で、笑ってて欲しい…

 ……

「芽衣子ちゃん、あのさ」

 思いきって…突然浮かんだアイデアを口にした。

「この後、まだ時間平気?
 もしよかったらさ…雪まつりの会場、少し歩かない…?」





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