FALL
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それから、いくつかのプールをはしごして、水着のまま入れるお風呂ゾーンで体を暖めてから、俺達はプールを出た。
更衣室を先に出ていたのは、芽衣子ちゃんだった。
ガラス越しにぼんやり外を眺めているようだった。
「芽衣子ちゃん? ごめんね、待たせちゃった?」
後ろから声を掛けると、芽衣子ちゃんは振り向いて、若干興奮気味に言った。
「相田さん! 雪、ちらついてます!」
「ん? あぁ、そういえば降るかもって言ってたような。芽衣子ちゃん、雪、珍しい?」
「あっ、やだな、ひとりで盛り上がっちゃって、恥ずかしいですね、すみません。
はい、私の住んでいる所では滅多には。
あんまり積もっちゃうと困っちゃいますけど、いざ見るとやっぱりテンション上がっちゃいます(笑)」
そう言って、芽衣子ちゃんはマフラーに口元をうずめて、恥ずかしそうに笑った。
仕草がいちいちカワイイ。
ずっと見ていたいけど、怪しいヤツにはなりたくないので、わざとキョロキョロと辺りを見回す。
「えーと。あ、ここから○○駅まで送迎バス出てるんだ?
これに乗って戻ろうか?」
○○駅はこの町一番の繁華駅。俺と芽衣子ちゃんが路面電車に乗った所から、また少し離れている。
「はい」
送迎バス停へ向かって歩く俺の後ろを、芽衣子ちゃんがついて歩く。
背後の芽衣子ちゃんの気配を感じながら、明日帰ってしまう芽衣子ちゃんと、今日いつまでどうすれば一緒にいられるかを、そればかり考えていた。
…