FALL
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「うっひゃあ、けっこう、高いね?」
「そ、そうですね」
ウォータースライダーのスタート地点に辿り着き、予想以上の高さに軽くパニックを起こしていた。
「芽衣子ちゃん、平気? 滑れる?」
「はい、多分…
あ、でも、相田さんが前で、滑ってもらっていいですか?
すぐ後ろについて滑っても、いいです?
それなら少しは、怖くないかもです…」
「オーケーオーケー。じゃ、それで行きますか。
肩にでも掴まってて」
「はい、お願いします…」
俺が先にスタート地点に座り、その後ろに芽衣子ちゃんが座ってくる。
芽衣子ちゃんが触れるのは、俺の肩だけと思ってた。
「…っ!!」
違った。もうひとつ。
俺の腰脇を…芽衣子ちゃんの太ももが、柔らかく挟む。
ヤバイ。ヤバイ。ヤバイ。
俺の鼓動、芽衣子ちゃんにバレてない…?
「あっ、芽衣子ちゃん、あそこ見て、分かる?
一昨日さぁ、坂本たちとあそこの足湯行ったんだよ」
咄嗟に、足湯の方に目を向けて、自分の動揺をごまかした。
「えっ? どれです? あっ、あの五角形のやつですか?」
「そうそう、あれ。
…あれ? 坂本? 坂本がいる」
遠目だけど、あの目立つドレッドヘアは間違いなく坂本。
今朝話してた通り、スイちゃんと一緒にいた。
「ほんとですか?
…あーっ、相田さん、ゴメンナサイ、私、これ以上下を見るの限界です」
「あっ、ごめん! じゃあ、さっさと下へ滑るよ! 3! 2! 1…」
「きゃあぁぁーー!!」
芽衣子ちゃんの返事を聞かないで、滑り出してしまった。
もうひとつの感触が、俺の背中に伝わる。
多分…芽衣子ちゃんが額を押し付けている。
芽衣子ちゃんに鼓動がバレない内に、早く下へ滑り落ちたかった。
途中で、また足湯の方に目を向けた時、
坂本とスイちゃん
キスしてた
思わず目を見開いたと同時に、
ざっぱーん
下に辿り着いた。
「ぷはぁっ! あーっ、こわかった!
相田さん、大丈夫です?」
思いきり水をかぶった芽衣子ちゃんが、下に戻れた安堵感でいっぱいの笑顔を、俺に向けた。
「う、うん。あ、意外に楽しかった? もう一回滑る?」
「いえいえ! もう、一度で十分ですっ」
「そう? あはは」
芽衣子ちゃんがそう辞退してくれて、内心ホッとした。
肩に置かれた手。
腰を挟まれた太もも。
背中に押しつけられた額。
予想外だった、坂本たちのキス。
俺の心臓が、もちそうになかった。
※よければこちらもどうぞ
→【FALL】中間雑談・3
→どさんこタイム・4
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