FALL
26/87ページ
「相田さんの塩、美味しそうですね。
あ、もちろん味噌も美味しいです。
連れてきてくれて、ありがとうございます」
ラーメンがどんぶりの半分を切った辺りで、芽衣子ちゃんが言った。
雑誌とか載ったことのない、ただの自分の行きつけの店だったけど、芽衣子ちゃんに喜んで貰えてよかった。
「そう? そんならよかったけど。
あ、じゃあ芽衣子ちゃんに俺から」
そう言って、芽衣子ちゃんの蓮華に麺と塩スープと葱と海苔、乗せられるだけ乗せて、
「はい、ひとくちの幸せ、相田版(笑)」
芽衣子ちゃんの目の前に運んだ。
芽衣子ちゃんは目をパチクリさせて、ふっと顔を綻ばせた。
「やだもう、相田さんってば! いいんですか? なんか、催促したみたいで、ごめんなさい(笑)」
言いながら、蓮華を受け取ってパクッとした芽衣子ちゃん。
綻んだ顔が更に崩れた。
「うん、美味しいです! じゃあ、お礼に私からも」
俺の蓮華に、麺と味噌スープともやしとメンマ、こんもり乗せて(笑)、
「はい、ひとくちの幸せ、芽衣子版って事で(笑)
あ、でも相田さんには新鮮味に欠けますかね」
苦笑いをしながら、俺の目の前に掲げた。
「ううん、味噌は結構ご無沙汰よ? ありがとう、いただきます」
蓮華を受け取って、パクッ。
久しぶりの味噌味、芽衣子ちゃんの気遣いがスパイスとなって、一昨日のあれなんかよりずっとずっと、幸せを噛みしめられた気がした。
…