FALL
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「らっしゃーい、空いてる席へどうぞー」
ガラガラと引戸を開けると、威勢のいい店員さんの声が飛んだ。
俺と芽衣子ちゃんは暖簾をくぐり、いい出汁の香る店内の奥へ入った。
この店はカウンタ席ーのみ。
「芽衣子ちゃんは、何にする?」
「そうですねぇ。もやしたっぷりの味噌かな。相田さんは?」
「俺、いつも塩なの。海苔たっぷりね。あ、ギョーザもつけちゃおう。
芽衣子ちゃんも頼む?」
「ふふ、はい、私の分もお願いします」
店員さんに注文して席につくと、次々にお客が入ってきて、あっという間に満席になった。
「わ。人気なんですねぇ」
「ちょうど飯時だしね。混む前に入れてよかった」
「すみません、お客さん、奥まで詰めてもらっていいですかね? ほんと、すみません」
店員さんに言われて、壁際まで詰めた。
はじめ、芽衣子ちゃんが入り口側に座っていたけれど、続々と入ってきたのがいかつい工事現場のおっさん達だったので、
「芽衣子ちゃんがそっちにいってくれる?」
「? はい、いいですよ」
芽衣子ちゃんと席を替わる。
思った通り、おっさんの肩がもろに当たる。
こんな窮屈な思いを芽衣子ちゃんにはさせられない。
だけど
同時に
芽衣子ちゃんの柔らかな肩が触れる
…こちらは、想定外だった。
…