FALL

21/87ページ

前へ 次へ


 居酒屋のバイトで明け方を迎え、店で少し仮眠を取らせて貰ってから、お昼過ぎまでのガソリンスタンドのバイトへ足を運んだ。

 自分の生活の為とはいえ、ちょっと飛ばし過ぎたかな。

 でもまあ、明日から2日間はバイトは二つとも行かなくていいから、頑張るのはあと少し。

 あくびを堪えながら、この日の仕事をこなした。

「お気をつけてどうぞ、ありがとうございましたー!」

 お見送りを終えて、なにげなく辺りを見回した。

「…えっ」

 幻を見たかと思った。

 道路の向かい側の商店街を歩いている…芽衣子ちゃん。

 カラオケの時と大分服装が違ってボーイッシュな感じ、茶系のチェックの丈の長いジャケットを羽織っていた。

 帽子屋の前で立ち止まって、商品を眺めている。

「相田ー? そろそろあがりだろ、お疲れ」

 タイミングよく、先輩が声を掛けてくれた。

「あっ、そうですか? じゃ、お先です! お疲れ様でした!」

 弾けたように、作業着のままガソリンスタンドを飛び出した。





21/87ページ
いいね!