FALL
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冬の海は寒かった、当たり前だけど。
「あっ、足湯発見ー♪」
坂本とスイちゃんが同時に叫んで、足湯に走っていった。
俺とマナちゃんは顔を見合わせて、苦笑いをした。
「なんかごめんね? 俺のツレが(笑)」
「こっちもごめんなさい、ツレが(笑)」
マナちゃんとは穏やかな空気で喋れる。不思議と安心感があった。
「えっ? タオルとか常備されてないの? ありえないっしょ!」
足湯に着くなり、スイちゃんが騒ぎ立てた。ありえなくは、ないかと思う。
「あ、よかったらこのタオル使って。一応人数分持ってきた」
「さっすがー、マナちゃん! 気が利く人だあー」
うざいくらいにマナちゃんを褒めちぎる坂本、マナちゃんが若干ひいてる(苦笑)
「坂本、うっさい。
だあーぁ、きーもちいぃー」
「わ、相田ジジくせー(笑)」
俺が一番に浸かったのをきっかけに、皆が続々と入っていく。
海を眺めながら入っていたかったので、自然とそちらに向けて一列に並ぶ、スイちゃん、坂本、マナちゃん、俺の順。
風が冷たかったが、空はすっきり晴れて、足が温まっていると身体全体もぽかぽかするから、不思議と冬を感じなかった。
しばらくたわいもない話をして、ふと坂本が後ろを振り返り、あっと声を上げた。
「ここからワイルドノース、近いんだな!」
ワイルドノースはここらでは有名な大型室内プール施設。木々の向こうにちらっとウォータースライダーが見えた。
いつかこのメンバーで行ってみるか!? と坂本が浮き足立って提案して、スイちゃんもそれにノリノリだった。
マナちゃんはまた苦笑いをして、俺を見た。
「坂本、今日は海、今日は足湯だろ(笑)」
正直に言うと、これ以上踏み込むのはなんか違うなと思った。自分のカンだけれど。
だからプールに行く話はお流れになってほしい、と思った。
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