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 ヤスコは前を見たまま「あー」と言って、数秒黙った後、

「相ちゃんの本、まだ欲しい?」

 と言った。

「えっくれるの? ほしいほしい!」

 どういう風の吹きまわし? と思わず、突然の提案に飛びつく。

「…やーだね。アレはアタシのもん(笑)」

「ひどーい。ぬか喜びさせないでよ~」

 またキシシと笑うヤスコにむくれる私。

 やっぱりヤスコ、相田さんの事…? と邪推をしてしまう。

 もしそうなら…私は…

 ……

 ……

「…ヤスコ~。おなかすいたねぇ」

 自分の気持ちを詮索するのをやめて、そう言って誤魔化した。

 家着く前にどこかで食べるかぁ、とヤスコは少しだけアクセルを強く踏んだ。










 あの時聞き取れなかった言葉が、

「相ちゃんに連絡取る?」

 だったのを知るのはずっとずっと後、私と一幸が付き合い出して数ヶ月経った頃。

 ヤスコが相田さんの事を好きと思ってたと白状したところ、「うわー、ないないないない」と思いきり溜め息を吐かれてからの、その真相だった。

「一応応援はしてたつもりよ?
 でもさぁ、自然の流れに任せた方がいいっつーか…
 アレコレ手を貸すより傍観した方が断然オモシロ… おっと。
 どっちにしろ、アンタ達はうまくまとまるって思ってた、うんうん」

 ヤスコはいつもの笑いで、うまいこと言いくるめたのだった(笑)










contact〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2020年1月28日~2月15日

[改稿終了日]
2021年6月13日






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