FALL

86/87ページ

前へ 次へ


「…ちょっと、芽衣子ちゃん。
 アイツ、いつもあんなに馴れ馴れしいの?」

 カッコ悪ィ、ヤキモチを芽衣子ちゃんにぶつけてしまった。

「マサさんのこと? 製造のチーフなの。だいたいみんなにあんな感じだよ?」

「ふーん」

「え、相田さん、まさか、ヤキモチ…?」

「……悪いですかぁー?」

 ちょっと大げさにむくれてみせると、芽衣子ちゃんがプッと吹き出した。

「やだもう…こんなに相田さんに一途…なのに…?
 …今まで、伝わらなかった…?」

 芽衣子ちゃんが恋人繋ぎで指を絡めてきた。

「そんなこと…あるわけ、ないでしょ…?」

「…ふふふっ!」

 口を尖らせる俺に、芽衣子ちゃんは頬を赤らめて微笑んだ。

「あ、芽衣子ちゃん、お昼食べるんだよね? どこに行く?」

「あ、えーと、そうだ! 私、美味しいラーメン屋さん案内する」

「お、いいね(笑) あの時と、逆だね」

「うん…
 あ! 先に相田さんの荷物を私の部屋に置いていこう?」

 芽衣子ちゃんは、昨年の雪まつりから帰ってからすぐ位に、実家を出て一人暮らしを始めていた。

 守ってあげたいような雰囲気なのに、意外とアクティブであることに最初は驚いた。それがまたギャップでかわいいんだけど。

「あ…芽衣子ちゃん、待って…ちょっと…」

「え? …わっ…」

 そう言って、細い路地に芽衣子ちゃんを引っ張っていった。





86/87ページ
いいね!