FALL

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「…あ、もしもし? メイだけど。
 …うん…うん…今、相田さんと一緒。
 今から帰るから。
 え? 偶然、会ったの。相田さんのバイト先の近くを、偶然歩いてた」

 靖子との通話が始まったようで、俺の方をちらちら見ながら、電話口で話す芽衣子ちゃん。

「…え? …うん、分かった。代わるね。
 相田さん、ヤスコが話したいって」

「ん? そう。あ、明日の事話しとくけど、いい?」

「はい。お願いします(笑)」

 芽衣子ちゃんから受話器を受け取る。

「あー、もしもし。靖子サン?
 あのですね、明日、おたくのお嬢さんをプールに連れていきたいんですけど。
 はい、ワイルドノースですよ。チケット2枚貰っちゃったんで。
 俺、明日バイトも大学もないんで。
 いいですかね?」

 今度は俺が、芽衣子ちゃんをちらちら見ながら、電話の向こうの靖子に話す。

『○X▲□※■△X○…!』

「ばっか、何言ってんだ。オメーは仕事しろ!
 そもそも…あっ?」

 靖子の言葉に頬が熱くなり、言い返そうとした時、プツッ、ツー、ツー、と突然通話が切れて、ピーッ、ピーッと、けたたましい音と共にテレカが受け口から出てきた。

「あ…芽衣子ちゃんごめん…
 テレカ、終わっちゃった(苦笑)」

「あははは! いいんですよ、あとちょっとしか残ってないって、気付いてましたから(笑)
 ヤスコ、何て言ってました?」

「あー、明日は芽衣子ちゃんをしっかり案内しろだとさ」

 ウソ。

 ほんとは。

 襲うなよ。

 そんなことしてみろ、会社からすっ飛んでいくからな。

 そう言われた。



 俺を何だと思ってるんだか、靖子は。





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