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「明日、何時に行っちゃうの」

 相田さんが見送るって言ってくれてる。ふわふわと気持ちが浮く。

 違うのに、すぐには帰らないのに、否定したい気持ちからくつくつと可笑しさが沸いてきて、

「さっきのは、ヤスコのウソです。今日来たばかりだもの、いきなり帰りませんよ」

 と言ったら、相田さんは目に見えて脱力して、ウソを言ったヤスコに恥を掻いちゃったじゃないかと抗議した(笑)

 そんな彼を適度にあしらうヤスコ、仲がいいなぁとちょっぴり羨んでしまう。

「さあ、メイ! ほんとに帰るよ!」

 ヤスコのはっきりした声に我に返って、でも、今度こそ忘れずに。

「それじゃあ、相田さん、もしまた会えたら、小説の事もっと聞かせて下さいね」

 言えた。また、なんて無いかもしれないけれど。もし、もしも。私なりの願掛け。

 さよならをして、幾度か振り返ると相田さんはまだ見送ってくれていて、その度に手を振ると振り返してくれた。

 強い北風が吹いて、もう一度振り返ったら相田さんの背中が遠ざかっていくのが見えた。

 振ったり振り返したりはもうおしまい…ちょっと、寂しかった。





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