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 その文芸冊子を譲ってもらえないかとヤスコに聞いてみたけど、

「やーだよ(笑) あたしだって気に入ってんだよ」

 と突っぱねられてしまった。ちょっと強く言ったヤスコに驚く。

 ヤスコ、小説とか好きなんだっけ? 読み耽っている姿なんて、今まで見た事ないけどな(笑)



 その日以来、私とヤスコは会う機会が無く…ヤスコは高卒入社、私は受験生、お互いが落ち着くまで行き来が出来なかった。

 それでも…あの相田さんの物語おはなしは私の頭の隅にずっと在って、時々思い出しては、作内で出てきたおじやを自分で作ったりして。

「芽衣子? 何か機嫌いいね? あら美味しそう、お母さんに作ってくれたのかしら?」

「ん? ふふ、残念でした、これは私の夜食用でーす。でもお母さんにもちょっとだけ、よそってあげるね(笑)」

「あらあら、お優しいこと(笑)」

 ごまかせたかな? 本当の事なんて言えない。私の心を優しく満たしてくれるあの物語おはなしの事は、誰にも秘密。





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