「芽衣子ちゃんっ」

　二人が角を曲がってしまったので、見失ってしまうかと思ったけれど、まだそんなに離れていなかったのでなんとか追いつけた。

「相田さん」

　芽衣子ちゃんが俺の声に気付いて、足を止めてくれた。

　靖子は俺をちらりと見て、またすぐに踵を返した。

「ほらメイ、行くよ。アタシゃ寒いんだよ」

「でも…」

　芽衣子ちゃんが俺と靖子の間をキョロキョロする。

　困った顔をさせてる、罪悪感がさあっと拡がったが、それよりも先に言葉が口をついた。

「あ、あのさ。明日、何時に行っちゃうの。
　俺、明日からしばらく大学休みだし、今日一緒に歌った同士だし、俺の話読んでくれた人だし…
　って、何言ってんだ俺。
　とにかく見送りに行か…
　あ？
　あれ？
　何で笑ってるの？？」

　途中から、芽衣子ちゃんが口を押さえてクスクスと笑っていた。

　靖子は、あーヤレヤレ、という風に溜め息をついていた。

　ますます訳がわからないでいると、ひとしきり笑った芽衣子ちゃんが言った。

「さっきのは、ヤスコのウソです。来たばかりだもの、いきなり帰りませんよ」





…