-BlueRosePrincess-【凍結】
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――泣き声が聞こえた――
私が目を覚ましたのは明くる日で、隣には枢が寝ていた。
噛まれた跡は勿論キレイさっぱりとなくなっていて、生気も回復していた。
すやすやと安心しきった顔の枢をみて、ぼんやりと"ああ、やってしまったな"と思った。
今回の事で私は、イレギュラーな自分にはどうすることもできないのだと思い知った。
ぼんやりとしたまま思考を飛ばしていると、隣で枢がもぞもぞと動いて、起きたようだ。
「あ…お姉様、おきて、た、の…?」
大きな瞳をきょろきょろさせて、不安気に尋ねる枢に、コクン、と首を縦に振ると枢は"よかった…"と呟いた。
だが、すぐにその表情は崩れ、瞳いっぱいに涙を溜めて私の袖を握った。
「ご、めんなさ、い…!痛いことして、ごめんなさいっ!きっ、きらいにっ、ならな、で…!」
ごめんなさいお姉様。とポロポロ涙を零しながら許してと泣きはじめた枢。
私はそんな枢の姿に酷く後悔した。
枢をここまで追い詰めてしまったのは、紛れも無くイレギュラーな“なまえ”の存在なのだから。
私は堪らなくなって枢を抱きしめてしまった。
酷く驚く枢は戸惑いに涙も一瞬にして止まる。
だが、すぐにハッとして腕を放したなまえはそのままベッドを下りて扉に向かう。
後ろからは枢の戸惑いの声。
「お姉、様…?」
『ごめんね、枢』
「やだっ、いかな、で…!お姉様あっ!!」
枢の叫び声には振り返らなかった。
そんな余裕はなまえにはこれっぽっちも残ってなかったのだ。
『(紅茶…母様の、紅茶が飲みたい…)』
心を落ち着かせる為に、リビングルームへ足を運ぶとそこにはお父様とお母様がいた。
「あら、なまえ。目が覚めたのね」
「気分はどうだい?」
『大丈夫…です、』
「そう、それはよかったわ」
「紅茶でも飲むかい?今、樹里の焼いたクッキーが出来たところなんだ」
昨日のことなんてなかったかのように、自然に振る舞ってくれる両親。
優し過ぎるこの両親には、しっかりとホントのことを告げた方がいいのかもしれない。
でも、、
まだ、もやもやの残る気持ちを見透かしたように、でも優しく笑いかける両親に私は涙が出そうになった。
『(ごめんなさい。臆病な私で、ごめんなさい…)』
心の中で何度も謝罪した。
すると、お父様がトレイに紅茶とクッキーを二人分用意して
「枢はまだベッドルームかな?扉の前まで持って行ってあげるよ」
「そうね、それがいいわ」
『でも…』
私は心の整理をするためにここに来たのに。
枢から離れたのに…
「なまえ、難しく考えなくていいんだよ。なまえの気持ちはどこにあるのかな?素直に、まわりのことは後回しでいいんだ。なまえならきっと、もしも事が起きた後でも、修正できる」
「そうよ、なまえ。本能のままに生きなさい。貴女は考えすぎなの。運命なんて一つじゃないんだから。決めつけはよくないわ」
『お父様…お母様…』
何故知っているの…?
何故わかるの…?
そんな疑問すら馬鹿らしくなるくらい、両親は温かな、優しい微笑みで包んでくれる。
私…は、
『ありがとう、ございます…』
「いいのよ。もっと甘えてね、なまえちゃん」
「さ、枢が待ってるだろうから」
そう言ってお父様はベッドルームの前までトレイを運んでくれた。
トレイを渡すと額にキスを一つ落として、
「素直になれるおまじない」
ニッコリと、綺麗に笑うお父様に心臓が跳ねた。
ごめんね、ホントはすごく
(あいしてる)
(お姉様あっ)
(ごめんね、枢)
(お姉様っ!お姉様っ!)
(もう離れない。約束するわ)
(…本当?)
(ホント)
――ぎゅうっ
(仲直りの印しにティータイムしない?)
(………する)
((―っ、可愛い!!!!))
2011.05.24