-BlueRosePrincess-【凍結】
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今日の授業はあと、倫理。
よくわからないのでいつも聞き流しているなまえは特に気にした風もなく、英にもらったポッキンチョコを咀嚼する。
「なまえ」
『なに?』
「僕にもそれ、頂戴」
『英にもらったら?英、枢がほしいって』
「なまえのが、いいんだ」
『はい?』
「なまえのを、頂戴?」
意味が、わからない。
英は尻尾を振って待機しているが、きっと出番はないのだろう。
『……これ?(食べかけ)』
「うん」
『……はい』
――パキンッ、
「有り難う」
『……満足したの?』
「うん、とても」
『(意味がわからない)』
きっと今クラス中のみんなと、考えがシンクロしたはずだ。
枢はなまえの食べかけのポッキンチョコを一口食べさせてもらうと、満足気に読書を再開したのだから。
キョトンとしたまま、読書に戻ってしまった枢を眺めていると、教室に誰かが近付く気配がした。
するとそのまま扉は勢いよく開き、教壇に一人の男が立った。
「倫理の臨時講師をすることになった。夜狩十牙だ。ヨォロシク?吸血鬼ども…」
また、やっかいなのが来た。
昨夜の零くんの件であろう彼は、授業中に寝るとリストに載せてやるとかの賜ってくれている。
誠に厄介だ。
『(倫理は意味がわからないから、いつも子守唄のように聞いていたのに…)』
「なまえ?」
『うっかり寝ちゃってリストに載ったら困るから、お散歩に行ってもいい?』
「…危ないことはしないでね」
『うんっ』
枢の了承を得て、彼にはなんと言い訳を…
「どこへ行く」
『腹痛です、センセ』
「ピンピンしてるように見えるが?」
『えー。じゃあ、お散歩に』
「…………」
彼の返事は無視して教室から出ると、優姫が立っていた。
『優姫、こんなところで何してるの?』
「あ、…なまえセンパイ」
『ここにいたら危ないわ。私と一緒に散歩しない?』
「え、あの、えっと…」
渋る優姫に『零くんの所に行きたいんでしょ?』と耳元で囁くと、弾けるようになまえの目を見て驚いた。
「っ、////えっ、と…」
『おいで、優姫』
手を引いて黙々と目的の部屋まで歩いていく。
このシーンはまだ、記憶がある。
彼の気配だって感じられる。
きっと、零くんはあそこに。
そう考えながら優姫を連れて向かった先は、私的住居区の客室。
『零くん』
「…吸血鬼が何しに来た。冷やかしか」
『拗ねないでよ。優姫を連れて来たんだよ?』
「零…」
「帰れ、優姫」
扉を再びしめようとする零を阻止して、扉の間に体を割り込んだ。
すると、零は血薔薇の銃【ブラッディ・ローズ】を米神にあてた。
『零くん。冗談は止めなさい』
「お前には関係ないだろ」
「っ、零!!」
――バチッ!!
「―っ、おまっ!?」
『零くん、貴方のそれは甘えよ。死んで楽になんてさせない。私をもっと利用すればいいの。そうすれば優姫を傷付けないで済むのだから』
銃を弾いた際に拒絶反応を起こして酷く手が痛んだが、そんなことは気にならない。
ただ、目の前の零の考えが変わればとただじっと瞳を見つめた。
「…お人好し」
『うん』
にっこりと笑ったなまえをそのままベッドに押し倒し、首もとに顔を埋める。
そのまま優姫に向かって目線をやった零は苦しそうに考えを巡らせたあと、
「俺はまた、こうして血を貪る化け物に成り下がるだろう。優姫、いつかお前のことだって食い殺すかもしれない」
「それでも私は、零を救いたい」
なまえはそっと零を抱き締めて、頭を撫でてやると、起き上がり優姫の頭も撫でた。
「なまえセンパイ…私…」
『いつでも相談していいの。私のことも頼ってね』
「―っ、はい…有り難うございます」
『じゃあ、そろそろ帰らないと枢に怒られちゃうから』
軽く手を振って部屋を後にした。
駒がひとつ、動き出した
(………………)
(ごめんなさい枢。怒らないで)
(………………)
(枢…)
(キスしてくれたら、許してあげなくもない)
2013.08.08